猫と一緒にガジェットライフ♪ムチャ(@mutoj_rdm821)です。
ずいぶん前に読了していたものの、情報処理試験のために書評を後回しにしていました。そろそろ重い腰を上げようと思います。
今回取り上げるのは佐藤優さんの「読書の技法」です。多いときには月500冊を読むという読書術はどういうものなのでしょうか。
1.熟読のための速読
まず勘違いしてはいけないのは、この本がよくある「速読術」の解説書では無いことです。
人間に与えられた時間は限られています。その中で読書は、他人の経験、知的努力を、読むことで自分のものにすることができます。
読書が人生に良い影響を与えるのは間違いないことで、実際これまで本と言えば技術書しか読んだこと無かった自分が、休職で違う本(といってもビジネス書ばかりですが)を読むようになって世界が広がった経験からも、言えると思います。
かといって、本を読むにもそれなりの時間がかかります。しかも、闇雲に本を読めば良いかというと決してそんなことは無く、中には読むに値しない(本当につまらない本もあるでしょうが、今の自分では理解できない、今の自分には必要ないといった物も)本もあります。
そこで筆者がとっている方法が「速読」です。熟読をする本を選ぶために、速読によって読まなくて良い本をはじき出すということです。
読書に慣れている人でも、専門書ならば300ページ程度の本を1カ月に3~4冊
しか熟読できない。複雑なテーマについて扱っている場合には2冊くらいしか消化で
きないこともある。重要なのはどうしても読まなくてはならない本を絞り込み、それ
以外については速読することである。--p26
筆者は多いときは月500冊を越える本に目を通しているといいます。実際は速読をして絞り込み、熟読しているのは6~7冊だそうです。但し、選ばれなかった本はそのままどこかへ行ってしまうかというと、そういうことではありません。速読にもしっかりとした手続きを踏んで処理を行い、短時間でもしっかりと得るべき物は得ています。筆者が行っている手順は本書で詳しく解説されています。
基礎知識は、熟読によってしか身につけることはできない。しかし熟読できる本の数は限られている。そのため、熟読できる本を絞り込む、時間を確保するための本の精査として速読が必要になるのである。
--p45
2.3種類の読み方
本書では、第2章が「熟読の技法」、第3章が「速読の技法」と題されており、「速読の技法」については「超速読と普通の速読」という副題が付いています。要は3種類の読み方を定義しています。
速読術とは、熟読術の裏返しの概念にすぎない。熟読術を
身につけないで速読術を体得することは不可能である。--p49
あくまで速読は熟読の上に成り立つ技術であって、まずは基礎知識をしっかり備えることが大切だと言います。本書では具体例として民族問題の基礎知識を身に付けるための本として3冊をあげながら、具体的な熟読の技法を解説しています。
なぜ3冊かというと、1冊に頼ると、学説が偏っていた場合に後でそれに気づいて知識を矯正するのに時間がかかるためとのこと。先生、いきなり無理難題をおっしゃります。
熟読の技法
熟読の技法について、ざっくり挙げてみると以下のようになっています。
- まず本の真ん中くらいのページを読んでみる(第一読)
- シャーペン、消しゴム、ノートを用意する
- シャーペンで印を付けながら読む
- 本に囲みを作る(第二読)
- 囲みの部分をノートに写す
- 結論部分を三回読み、もう一度通読する(第三読)
「第一読」~「第三読」とあるように、3回は読めということです。当然ながら、書き込みをするということは購入が前提です。
実際に、ただ読んでるだけではそのまま抜けて行ってしまうので、何かしら作業を伴わないと身につかないのは間違いありません。
超速読の技法
次に速読の技法です。
速読は一冊を5分で読む「超速読」と、一冊を30分で読む「普通の速読」に分かれます。
超速読は以下のように行います。
- 本とシャーペン、ポストイットを用意する。
- 時間を計り、1冊に5分以上かけない。
- 序文の最初の1ページと目次を読み、それ以外はひたすらページをめくる。このとき文字は読まない。とにかくページ全体を見る。強調箇所や図表だけを見ていく。
- 気になる語句や箇所が出てきたら、後でわかるようにシャーペンで大きく丸く囲むなど印を付け、ポストイットを貼る。
- 結論部の一番最後のページを読む。
どうでしょう?できそうですか?
よっぽど慣れていないと、5分でこれを行うのは難しい気がします。これはあくまで「既に基礎知識を備えた筆者だからできる」手法なのであって、これを参考に自分なりの手法を導き出せればよいのだと思います。しかし、時間を決めるというのは有効な気がします。
そして、以下のような記述もあります。
超速読では、シャーペンで印を付けポストイットを貼るなど、本を「汚く読む」ことが重要。だから超速読で済ませる本でも、必ず購入する。
--p79
さすがに何でもかんでも購入するのは難しいでしょう。今なら事前に目次をチェックしたり、amazonでレビューを読むことでこれに変えることができるのではないかと思います。また、書評をブログに書いている人もたくさんいらっしゃるので、そういう物を読むのもいいと思います。(いちおう自分も書いてますが・・・(;´∀`)
普通の速読の技法
最後に普通の速読の技法です。これが一番難しいのだそうです。
同じように列挙してみます。
- 「完璧主義」を捨て、目的意識を明確にする。「もう2度と読まない」という心構えで望むことが大切。
- 雑誌の場合は筆者が誰かで判断する。迷ったら買う。カネを払って得た雑誌の内容の方が、ただでコピーを取った物よりも記憶に定着する。
- 定規を当てながら1ページ15分で読む。
- 重要箇所はシャーペンで印を付けてポストイットを貼る。
- 本の重要部分を1ページ15秒、残りを超速読。目次と前書きを注意深く読み、それから結びを読む。
- おおざっぱに理解、記憶し、「インデックス」をつけて整理する。
「金を払った方が記憶に定着する」というのは確かにそう思います。やっぱり、お金を出すと「元を取らねば!」という意識が少なからず働きます。また、自分のものであれば、今は必要ないと思った本も、後で必要になったときに読み返すことができます。
自分の場合、最近はブックオフをよく利用しています。100円の本の中にも、わりと評価の高い物が流れてきたりするので、とりあえず確保しておきます。自炊してしまえば場所は取りません。
あと「インデックスを付ける」という考え方は、大いに賛成できます。自分も以前はJavaプレスやWEB+DBプレスといった雑誌をざっくり読んで、新しい技術の概要だけ掴んでいました。語句と概要だけ掴んでおけば、後で必要になったときに、キーワードから引っ張ってきて深く調べることができます。
3.読書ノートを作る
第4章は「読書ノートの作り方」として、筆者のやり方を解説しています。
やっぱり、身につけるためには手を動かさないといけません。何かしらアウトプットを残すことで、より記憶に残りやすくなり、後で見直す事もできます。
今ならEvernoteに残すこともできますし、ブログに書くこともできます。
これは持論ですが、「他人に分かるようにに説明できなければ、それは理解したことにはならない」と思っています。分かり安く書けるかどうかで、自分の理解度を確認することができます。
4.基礎知識を補うためには
5章では知識の欠損部分を補うために、教科書と学術参考書を活用しようということで、世界史、日本史、政治、経済、国語、数学の6科目について読むべき本が紹介されています。
大人になったからこと理解できることもあるかもしれません。さすがにSEやってる自分には世界史や日本史はどうかな~と思いますが、国語についてはビジネスの分野でも参考になりそうなことが書いてありました。例えば以下の文。
ビジネスパーソンが仕事で接するほとんどの文書も、論理を重視する文書のはずだ。論理を読み解くという切り口から見ると、確かに現代文は数学と親和性が高くなる。
ただし、言語と数学には異なる部分が有る。数学の場合、数字、記号については全ての人に共通認識がある。これに対して、人間の言葉には、それぞれ良く言えば個性、悪く言えば癖がある。しかし、これらの個性や癖を、読者が「好き、嫌い」という感情で読むと、意味をとらえることができなくなる。
「言葉は揺れ動く、論理そのものは普遍で敵ですけど、それを表現する言葉が数学における記号と違って、絶えず状況に応じて様々な意味に変化します。だから、同じようにきちんと論理的に書いてある文章でも、我々が自分の個人言語で読んでしまうと、人によって言葉の感覚が違うから、幾通りもの答えになってしまう。」
言語が用いられているコンテクスト、すなわち文脈を重視せよと出口氏は強調する。
--p183
自分が記述する場合はできるだけ論理的に、逆に読み取る場合は文脈を重視する必要があると思います。
国語のところで参考図書として挙げられていたのは「New出口現代文講義の実況中継1~3」という本です。この本には自分も興味を持ちました。
5.まとめ
これを読めば自分も本がすらすら読めるように狎る!と軽い気持ちで望むと返り討ちにされる、深い内容の本です。
筆者のやり方を全て真似するのは不可能に近いですが、読書に対する取り組み方や意識の持ち方は非常に参考になります。
いろいろ本を読んでいるけど何となく身についている気がしない・・・という方にオススメなのでは無いかと思います。
amazonのレビューもけっこう読み応えがあるので、まずはそれらを読んで、この本が読むべき本かどうかを「速読」してみてはいかがでしょうか。